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 古本屋の日々は相変わらずせわしなく過ぎて行くが、心を癒してくれる存在がある。赤と紫の活躍、野球のカープとサッカーのサンフレッチェの快進撃が続いている。
 サンフレッチェがJ1を連覇したのが3年前、カープがセントラル・リーグを連覇したのが一昨年と去年なので、すれ違い。今年は同時優勝の絶好のチャンスだ。赤と紫の優勝パレードが実現したら、ホームの広島県人にとっては無上の喜びである。
 これからは多分にカープファンの手前みそになるので、野球に興味がない人や他チームのファンの方にはあらかじめ謝っておく。今年もカープはやれるぞ、と思った試合がある。5月1日にマツダスタジアムで行われた巨人戦。
 その頃の巨人は打線が爆発して破竹の8連勝。そして、その日の先発は山口俊だった。昨年は酒乱暴行事件で謹慎していたが、大金を出してフリーエージェントで獲得した実力をようやく発揮し始めた。その試合まで2連続完投で3連勝と絶好調!(中畑清節で)  片やカープの先発は中村裕太で、まだ23歳と高卒5年目の若いピッチャーだ。ドラフト5位で獲得した無名の選手で、ファームでみっちり鍛え上げて去年5勝した。将来のエース候補の一人である。
 こりゃ、ちと分が悪いなと正直、思った。巨人は前節のヤクルト戦で、2戦連続11得点と、チーム打率が3割に届こうかという勢い。不安は的中して、中村裕太は初回、2回と打ち込まれて3失点。巨人の大雑把な攻めに助けられて、よく3点ですんだと思うほどの一方的な展開……、だと思っていたら、打線が奮起して山口俊を打ち込んだ。
 去年の対戦成績も影響しているのだと思う。18勝7敗と巨人を圧倒した。中村裕太が粘って追加点を阻んでいるうちに、潮目が変わった。かつての中日がそうだった。落合監督の勝利至上主義のえげつない野球(そつのないという表現をする人もいる)で、リードしていても終盤になるとあやしくなって、僅差で競り負けることが多かった。
 結果は6対4でカープの逆転勝ち。次の日は雨で中止になったが、次戦も3対2とカープが競り勝って、巨人の勢いは完全に止まった。巨人にとっては、勝たなくてはいけない試合だった。札ぶらでフリーエージェント選手や他チームの外人選手を引き抜いて、ガツガツと目の前の1勝、その年の優勝フラッグを得るために自前の選手の育成を犠牲にしているチームが、将来を見据えて若手を育てながら戦っているチームに、絶対に負けてはいけない試合だっだ。
 ペナントレースはまだ序盤だが、カープの3連覇の可能性が高くなった。ライバルだと思っていた横浜は、自慢の先発左腕の両輪が故障して投手が駒不足。ラミレス監督の積極的に新人投手を登用するという采配は、今永、浜口という柱を育てたが、日本シリーズに進出したことで登板過多、肩を故障してしまった。プロの選手として何年も活躍できる体がまだできていない段階で、セーブさせずにどんどん投げさせてしまった弊害だろう。
 ちなみに、野球ではもう一つ、楽しみがある。メジャーリーグでも二刀流で活躍しているエンゼルスの大谷。日本でもアメリカでも、二刀流の是非がかまびすしいが、完全に力で批判的な評論を抑え込んでしまった。
 わたしは、二刀流を続けることが大谷の野球生命を長くすることだと考えている。大リーグの先発投手は中4日での登板が一般的である。これだけ故障者が出ても中5日にしないのは、何か理由があるのだろうか。とくに、体が頑健ではない日本の先発投手には過酷である。ヤンキースの田中、カブスのダルビッシュ、マリナーズの岩隈……。
 大谷がバッターとしても活躍できれば、今の中6日という特別待遇が維持できる。打てなくなれば、ピッチャー優先ということになり、中4日に……。まあ、こんな感じで、素人評論家の楽しい時間を過ごさせてもらっている。
 6月には、サッカーのワールドカップが開催される。ハリルホジッチ監督の解任で、日本代表の評判は最悪だ。逆に言えば、プレッシャーがない分、気楽に戦えるのかもしれない。ある意味、南アフリカ大会の岡田ジャパンの状況と似ている。プロの世界では、勝てば官軍、評価は一変する。梅雨時のモヤモヤを吹き飛ばしてほしいものである。

Copyright(c):Masahiro Akagawa 著作:赤川 仁洋


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*亜木冬彦&赤川仁洋の作品集が文華別館に収録されています。


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