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「ねぇ・・・? ピントが合ってないよ! どっち向いてんの?」
 問いかけてみると、青っ白い不健康そうな顔の女の子が、楽しいんだか、困ってるんだか、機嫌が悪いんだか、推測がちょっと難しいような顔してこっちを向いた。
 親指の激しい動きを妨げられたことにムカついてんのか、判らない顔のまま、また少し俯いてボタンを打ち始めた。
 彼らにしてみれば、楽しみ? 生き甲斐? 生活のすべて? だけど表情は神経質そうに、そんなに楽しそうにしているわけじゃ、ないんだよねぇ・・・。
「溢れるほどの言葉をいじくってるんでしょ? ねぇ、この字、書いてみて? この字教えて? ねぇ、これなんて読むの?」
「・・・・・?」
「なんで解らないんだよっ?」

 診察室に入った女性が一人、「・・・腱鞘炎ですね。」と言われた。と、覗いていると、彼氏に八つ当たりしていた。
「だったら少し控えりゃいいじゃん。25、6にもなってビ―ビ―ビ―ビ―言ってんじゃないよっ!」と言われていた。
 でも、そんな性質を受け入れて交際してるあなたもいかが? と思うが。
 速打ちのスピードを競ったその先に何があるの? 一等賞になったら何かあるの? 仕事で有益に繋がるの? 優越感に浸って終わり? 祝福してくれるのはとても親しい人?
 会話もまともに出来ない人が、メールしてるからコミュニケーション取れてるって?
「すいません、それ勘違いですよ―!」
 だって、受話器で交わしている会話でさえ、きちんと対応出来ないのに、社会に出て通用するはずないでしょ。

「何歳ですか? え? あ、そうですか。まだ18、9くらいかと思いました。いや、口調がね? 成人してる人の言葉遣いだとは思えませんでしたので・・・。えっ? お子さん居らっしゃるんですかぁ!?」
 大変でしょうね。精神年齢あんまり変わんないから。教育するにもお兄さんが弟さんを教育するのかな? 子供同士で教え合いっこするのかな・・・。
 よく、最近の親子には「友達の様な、親友みたいな関係っていいですよね・・・」なんて言葉を聞くことがありますが、まっぴらご免だね。「俺は友達から生まれてきたんじゃねえよっ!」

 先日、深夜に放送されているCBSニュース(米・ニューヨーク局)の中で、「かつて、世界最強と言われた日本の銀行はどこへ行ったのでしょうか?」というリポーターのコメントがありました。
 日本の情報クイズ番組で、インタビュアーが、答えを間違えそうな人を探す時に、目安として茶髪で厚底靴を履いてる若い女性を狙って行くんだそうです。「靴底の高さと知性は反比例する・・・」んだそうです。まぁ、ご尤もですが。妊娠しているのに平気で履いてる人も居るくらいですから。

 経済や文化の猛スピードな発展と、見事に反比例してしまった社会倫理と知性。簡単に振り回されるという、際立った体質でしょう。
 これでもし、戦争なんか始まっちゃって、原子爆弾なんか落とされちゃったら、皆さんどうするのかな・・・。文明の利器なんて木っ端微塵ですよ? みんな自殺するのかな・・・。

「 生きていけな―い 」って。

「オーイ!起きてるか? 人の話、ちゃんと聞きなよ?」
 こりゃ、日本人は自立出来ませんよ?

Copyright(c):Yutaka Araki 著作:新木 結太佳

◆「not-independent」の感想

*新木結太佳さんの作品集が、文華別館 に収載されています。《文華堂店主》


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