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第1回・「ミモザ」(2002.2月撮影)



 早春の息吹を感じさせてくれる花というと、子供の頃は菜の花だった。畑一面に咲いている黄色い花を見ると、木枯らしが吹いていてもぬくもりを覚えたものだ。太陽の光をいっぱい蓄えた花弁は、日照時間が次第に延びるにつれて、ますます黄色く輝いて見えた。
 上京して、都会の住宅地で暮らすようになって、菜の花を見ることもなくなった。その代わりにミモザがある。通勤途中の沿道に、立派なミモザの木が塀からせり出している。房状に連なったまん丸い小さな花が黄色みを増すごとに、着実に春の足音が近づいてくる。
 いよいよ満開になったミモザの下に立って、しばし佇む。黄色い陽光のシャワーを全身に浴びながら、長かった冬の日々に別れを告げる。そして、ちょっぴり力を込めて、歩き出すのだ。

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