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第4回・「公園の恐竜」(2002.6月撮影)



 隣町の外れに、小さな公園がある。ときたま通りかかるのだが、子供たちが遊んでいる姿を見たことがない。確かに、鬱蒼とした木立に陽光が遮られて、昼間でも薄暗くて陰気な場所ではある。
 その公園の真ん中に、一匹の恐竜がうずくまっている。大きな耳? それともエリマキトカゲのような襟? ずんぐりした体は、どこかユーモラスで愛嬌がある。しかし、すねたような、いじけたような目が、全体の印象をひどく損ねている。
「どうだい、調子は?」わたしは恐竜に声をかける。「まあ、ボチボチでんな」、どういうわけか、関西弁なのだ。「昨日の夜は姿が見えなかったけど、どこかに行ってたのか?」、恐竜がギクリと目を見開いた。そのまま固まって、置物に擬態する。こいつのいつもの手なのだ。
「夜遊びはほどほどにな」、そう声をかけて、わたしは公園の外に出た。

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