中央本線、山梨は石和温泉駅の近くに、小さな公園がある。その敷地内に、彫刻が何体か飾られている。芸術作品を愛でながら遊歩道を歩くという贅沢な公園なのである。
その最後の作品を前にして、わたしはしばし佇んだ。まるで、もぎ取られたように首や両手が欠けている。さらに右腰がざっくりと削られて、痛々しいまでの傷跡を見せている。これは、荒廃した現代人の精神を表現した作品なのだろう。
そんな思いで彫刻を眺めていたら、台座も欠けていることに気づいた。するとこの傷跡は、どこかの乱暴者が酔った勢いで鬱憤を晴らしたした跡なのか? それこそ、現代の暗い世相を象徴しているではないか。
いやまてよ、とわたしはまた考えてしまう。ひょっとしてこの台座の傷跡も、作者が意図的に工作したのかもしれない…… 。
あなたは、どちらだと思いますか?