T-Timeファイル表紙に戻る

いつでも戻れる場所があるということ、
忘れてたかもしれない。
いつでも受け入れてくれるヒトがいるということ、
忘れてたかもしれない。

私は、ケッコンをした。
とても早く、ケッコンをした。

そして今更ながら
涙を流すようになった。
一時期はホームシックにさえなった。
そんなに遠くなんかない。
そんなに遠くなんかないトコロに、
ちゃんと父と弟は住んでいた。

あの頃、
私は父子家庭という
ゲンジツから
逃げ出したかったのかもしれない。
家に寄り付かないような
日々も送ってきていた。
だからケッコンという選択も
ためらうことなど何もなかった。
大好きな彼と一緒に過ごせるなら、
それでいいと思っていた。
それ以外のことを、
私は何も感じていなかった。
まさか、私がホームシックになるなんて。
まさか、私がカゾクを大事にしていたなんて。
あの頃の私が
気付くなんてことはなかった。

婚姻届って
ものすごく重い紙だと気付いたのは、
提出するその瞬間。
十何年間
違和感もなく使っていた
私の姓が変わるなんて。
ものすごくココロが痛かった。
今となっては
慣れてきたものの、
夫婦別姓という選択肢が
頭の中にすらなかったこと、
少しだけ悔やんでいる。
もちろん
私が実家を捨てたわけじゃないけど、
姓が変わるということは、
少しだけ遠のくことと同じだと思う。
どうしても、
私は彼だけに染まれないから。

ケッコンは間違ってなんかいない。
私はそう思う。
ここにいて、
私はものすごく幸せだ。

けれど、けれど。
止められない涙だってある。
私は小さい頃に母を亡くした。
それだけじゃないことに気付いた。
弟は
私よりも小さい頃に母を亡くしたことに。
父は
誰よりも愛していたヒトを
とても早く
予期せぬ時期に
亡くしてしまったことに。
自分のコトばかりに気を取られていて、
カゾクなんて顧みることなかった。

ケッコンしてから、
どうしても、どうしても。
その事実だけが
私のことを無性に責めたてる。
しょっちゅう父は来るけれど、
しょっちゅう弟は来るけれど、
近い場所に父は住んでいるけれど、
近い場所に弟は住んでいるけれど、
気になってしょうがないんだ。
父の姿が
やけに老け込んで見えるようになった。
ものすごくココロが痛い。

カゾクが減るって
ものすごく寂しいことだって、
私だってよく知ってるのに。
なんで、こう
どうして私はこんな娘なのかな。

こんな娘なのに、
こんな私なのに、
父はいつでも何でも
受け止めてくれているから、
余計にココロが痛むよ。


Copyright(c): Yuuka 著作:ユウカ

◆「結婚ヲシタアタシ」の感想

*ユウカさんは「MOON-NIGHT」(文芸&アート リンク)というエッセイや詩のサイトを運営されています。


表紙に戻る