●NEXT (No.7)


「守? クリスマスの日にサンタのおじさんにプレゼントをお願いするなら何を頼む?」
「合体ロボ!ガイドロン!!」
守はパパの質問に 勢いよく答えました。
「合体ロボ?ガイドロンねぇ……?」とパパは確認する様に復唱しました。
守は パパのそんな様子を見ながら 質問をしました。
「ねぇ、パパ。 サンタさんってイイ子にしていたら お願いを叶えてプレゼントを持ってきてくれるんでしょう?」
「そっ、そうだぞ。だから、守がイイ子にしていないと この合体ロボも 持ってきてはくれないんだゾ.。」
パパは守に 言い聞かせるようにいいました。
「ホント!!じゃぁ、すごくイイ子にしてたら もうひとつのお願いも叶えてくれるかな?」
「もう一つのお願い?」パパが不思議そうに聞こうとすると 守はハッとした顔で
「ううん、何でもない……ホントに合体ロボ ガイドロン、サンタさんは持ってきてくれるかなぁ?」
そう言ってすごく楽しみな顔をしました.
でもパパは知っていました.
守君が言おうとした もう一つの お願い.
「ママがうちに帰ってきますように」 と
守君のママは 今から半年前に 守の家から出て行ってしまいました。
3人で楽しく暮していた家庭から突然ママだけが消失してしまったのです。
これには 守も 守のパパも驚きました。
それはママが出て行くような 理由が 2人には思い当たらなかったからです.
実は ママは 守のパパ以外に 好きな人が 出来たのです.
そしてママはパパも守君も置いたまま、その人のところに行ってしまいました.
守君は とても寂しそうでしたが  パパはもっと寂しそうでした。
「やっぱり 守のためにも ママはこの家に必要だ.」

守君の願いを叶える為に パパはママの携帯電話にちょくちょく電話をしていました。
でもいつも ママの返事は同じです.
「しつこいわね。私はもう、あなたみたいなつまらない男に興味は無いの。守は可愛いと思うけど……でも、私は私の人生を生きたいの。 自分の気持ちに素直に生きたいのよ…」
ママはいつもそう答えました。 これをわがままと言うのかもしれません。

守君はサンタさんがお願いを叶えてくれる様にと 毎日イイ子にしていました。
どんどん 進んでお手伝いはするし 寝る前には ちゃんと自分で歯磨きをして
1人で寝ました。 そして 寝る時にはかならずお祈りをしました。
「サンタさん どうかママが帰ってきてくれますように・・・」
カレンダーの日付は12月23日。守君は布団の中でいつもより長く長くお祈りしました。
その日は、ママの夢を見ました。パパと3人仲良く公園でおべんとうを食べている夢でした。
12月24日クリスマスイブ。
イブの夜、わくわくして眠れなかったのか 守君はいつもより
遅くまで起きていましたが 10時をまわるころには さすがに寝息をたてていました。
守のパパは 寝静まった守の枕元に行き そっと合体ロボ ガイドロンの箱を置きました。 守の枕元には靴下が置いてありました。 その中を覗くと 手紙が一つ
「あした、目を覚ましたら ガイドロンと ママがいますように   サンタさんへ」

守のパパは その手紙を読んで 気持ちを決めました。
守には やっぱりママが必要だ。
パパはジャンバーを羽織ると 夜の町に歩き始めました。
すると空から白い粉雪が降ってきました。
「雪だ・・・」パパはそれを見つめると あの日の事を思い出しました。
そう、ママにプロポーズしたあの日、あの時も こんな粉雪が降っていたんだ……。
パパはママのもとに 急ぎました。 降りしきる粉雪は パパの肩にも 降り積もって
その雪はまるで パパに 「がんばれ!!」と肩を叩いているようでした。

次の朝、守は目を覚ますと枕元に 合体ロボ ガイドロンが置いてある事に気がつきました。
 「わっ、ガイドロンだ!!」守はそれを手に取ると急いで階段を降りていって
パパにその事を教えようとしました。
「パパ−」 階段を降りたとき 守は もっとビックリしました。
そこには 守のママがいたのです.
「ママ・・・?」 
守は寝ぼけた目で夢でも見ているのではと自分を疑いました。
でもそれは紛れもないママの姿でした。
ママは 少し恥ずかしそうに 答えました。「守、オハヨウ。」
「ママ、ホントにママなんだね.夢じゃないんだね.」
守はママに抱きつきました.
「パパ−、 ママが帰って来たよ。 サンタさんがお願いを叶えてくれたんだよ.」
守は嬉しくて涙が出そうでした。いや、ほんの少し恥ずかしいけど、泣いてしまっていました。
守がそう言うと ママは 指を差して言いました。
「守 パパはあっちよ。」
そう言って指を差した場所には 知らないおじさんがいました。
パパよりも遥かに体が大きく、そしてその顔はとても怖そうな感じです。
「何を言ってるのママ?この人はパパじゃないよ.」
そう言うと そのおじさんは守のところに寄ってきて
「今日から おれが パパなんだよ。よろしくな、坊主!」といって 乱暴に守の頭を撫でました。不思議そうな顔を浮かべる守に向かってママは冷たく笑っていました。
「守。サンタさんが新しいお父さんもプレゼントしてくれたのよ。」
その顔は、守がいつも見ていたママとは なんだか違って見えました。

守君の家のお風呂場には 黒いビニール袋が何個か置いてあって そこには何かが入っていました。
実はその中身を合体させると、守君の本当のパパになるのです。
とは言っても もうパパは動き出しませんけど……
どうやら本物のサンタさんは プレゼント用の袋の色と 中身を間違えてしまった様ですね。

 

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