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第1回・「琴平3題」(1995.12月撮影)


「念を孕んだ木」

 香川県琴平市に行ったときの写真で、この大木は、金比羅(こんぴら)宮のおみくじ処の前にあった。幹に荒縄が巻いてあって、それにびっしり、おみくじが挟んである。これは伝聞だが、悪い目が出たおみくじは、厄落としのために神社に残して行くのだという。とすれば、このおみくじはほとんが凶だろうか。凶運をどんどんため込んで、この木はむくむく肥えている。

 




「擬宝珠」

 擬宝珠──、「ぎぼうしゅ」、あるいは「ぎぼし」「ごぼうし」と読む。腐食を防ぐために欄干の柱頭につける装飾で、名前の通り宝珠を模したものだ。
  眼下には、琴平市の市街が一望できる。 このアングルで見ると、どうです、本物の宝珠が空中に浮かんでいるようで、ありがたーい気持になってきませんか?





「空飛ぶハヤゲン」

 琴平の商店街のアーケードだったと思う。天井にこうした看板がニョキッと突き出ていた。たぶん、同じような看板が商店ごとに設置されていたのだろうが、記憶が浸食されていて定かではない。この写真だけが、手元に残っているだけだ。
 どうしてカッパなのか? なぜ空を飛んでいるのか? そんな気持で写真を撮ったような気もする。しかし、今こうして写真を眺めていると、「ハヤゲン」という名前と空飛ぶカッパが、なんだか妙にしっくりと調和しているように思えるのだ。

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