投稿作品の感想(2003.9月号) ( No.9 ) |
- 日時: 2003/09/19 23:26
- 名前: 赤川仁洋 <touzin@sannet.ne.jp>
- 9月号の投稿作品の感想です。
以前にも書きましたが、これは一読者としてのわたしの個人的な感想にすぎません。 自分で納得できる部分だけ、参考にしていただけたら幸いです。 以下、敬称は略させていただきます。
「走れ二階堂氏」ナイトクローラー
叩き上げの事業主の美談的な内容を、最後でひっくり返した力業はさすが。ただ、ちょっと強引な感あり。この散財が二階堂氏個人にとって重要なことであるという理由をもっと強化できれば、読後感がすっきりしたでしょうね。描写で気になったのが、「エメラルド色に輝く水田」、タイトルバックの写真を探していて気づいたのですが、稲穂の実る秋口というよりも、初夏や夏のイメージではないでしょうか。
「キリング・タイム」蒼井 上鷹
会話だけで構成した掌編創作。手法自体に目新しさはないですが、こうした挑戦は文章修行には有効でしょうね。内容も、時代とともに複雑化する悪魔の“業務内容”を描いてユニーク。サラリーマン的な質疑応答がなんだか微笑ましい。欲を言えば、どこかに塩気(恐怖や毒気)がほしいところ。そうすれば、全体が引き締まって、もっと印象が鮮明になったでしょうね。
「一つだけの願い」かば
新境地を開こうとする作者の意欲が伝わってくる作品。まだ描写がぎこちないところや説明がくどい部分が散見されますが、どんどん書いていくことで解消されるはずです。例えば、「取り巻きたち」という言葉が繁用されていますが、あまり重要な役どころではないので、もっとさりげない言葉で代用できるはず。推敲を重ねることが、上達の近道です。
「助けて」鈴雪
これはもう、完成品でしょうね。短い作品ですが、人間の性(さが)が存分に描かれていて、読後感は充実しています。とくに、最後のシーンは圧巻でしたね。作品の軽重は、長さではないのだと再認識させられました。
「ああん桃」ますゐ 英人
果物は食べられることに快感を得ている、このどこかエロチックな論法には、すっかり納得させられてしまいました。その特異な感覚が、友人の奥さんとのラブシーンに存分に活かされています。この感性はただものではない。ただ、旧仮名遣いの文章が良くも悪くも作品の雰囲気を決定していて、読者の嗜好によっては賛否がわかれるでしょうね。
「天の助け」壱岐 賢也
作者はベテランの釣り人だけに、釣りのシーンは迫力と臨場感があります。わたしも釣りをやっていた時期があるのですが、フナムシが餌に使えるとは知りませんでした。全体の流れも自然で、うまくまとまっています。欲を言えば、この種の物語としてはいささか“定番”という印象は拭えないので、何かもうひと工夫あったらさらに魅力的な作品になったと思います。
「うまいメシ」条 文多
友人を亡くすということは、年齢に関係なくショッキングな出来事ですが、若い頃の衝撃はより強烈です。その死という負のイメージに、生の象徴である食欲を全面に押し出して対比させてところに、非凡なセンスを感じます。ただ、全体的に情感に流されているきらいがあるので、しばらく間をおいて書き直せば、もっと陰影の深い作品になるかもしれません。
「今日は、よせ。」高瀬 年揮
タイトルにもなっているエピソードがうまく活かされています。人間の心理は天の邪鬼にできていているようで、いくら正しいことを声高に主張しても、素直に従ってはくれません。創作にも同じ事が言えます。いくら崇高な理念や目的を持った作品でも、押しつけがましいと読者にそっぽを向かれてしまう。気になったのが、最後の老婆の例え話。説得力が乏しくて、もったいない気がしました。
「蜂蜜色の家」ばいお
素直に書かれた旅行記で、好感が持てます。旅先での地元の人々との交流が微笑ましい。ただし、全体的に日記をそのまま読まされているような散漫な印象を持ったのも確かです。核となるエピソードを中心に据えて書くと、文章や内容にメリハリが出て、読み物としての面白さが増したのではないかと思います。
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Re: 全体の感想(2003.9月号) ( No.10 ) |
- 日時: 2003/09/20 06:20
- 名前: 唯野ミホ
- 参照: http://www.h4.dion.ne.jp/~tadano/
- 赤川さんの次だし、全然ご意見も違うので恥ずかしいのですが、こんな風に感じる読者もいるということで、書かせていただきます。
ナイトクローラーさん「走れ二階堂氏」
はじめまして。 こちらでよく作品を拝読してますが、いつもオチが面白くて楽しみにしてます。 今回も「金の亡者」と呼ばれる自分を反省してめでたしかと思いきや、そう来るかという感じでした。 とても面白かったです。
鈴雪さん「助けて」
はじめまして。 「助けて」はとても印象に残りました。 子どもに悪いと感じなからも、パチンコにのめりこむ自分を止められない母親は、泣きながらフィーバーを握る姿に凝縮されていて、胸にきました。 悪行をする人にも大抵はその理由があると思います。 母親の表裏両面の姿を描いたところに好感を持ちました。 ただ皆さんと違って、私は終わり方が唐突過ぎるように感じて、もう少し主人公のリアクションなどが見たかったです。
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Re: 全体の感想(2003.9月号) ( No.11 ) |
- 日時: 2003/09/20 10:32
- 名前: ナイトクローラー <hzu01553@nifty.com>
- 参照: http://homepage3.nifty.com/YAMINABE/
- 拙作へのご感想ありがとうございます。
>かば様 二階堂氏の会社……そういえば、何の会社なんでしょうね? 不思議と考えませんでした。でも、多分、すごく儲かる会社なんでしょう。
だから少なくとも、出版社ではないと思います
>鈴雪様 「風刺の効いたオチ」とは嬉しい誉め言葉です。赤川様にご指摘いただいた通り、「ちょっと強引か?」と思っておりましたので。力技で書いてしまった感は残りますが……。
なお、冒頭に出てくる道は、ほとんどそのまま、我が家の近所にある道です。
>赤川様 「美談をブチ壊したい」という思いが先行して、うまく伏線が張れなかったという反省はあります。それと、エメラルドの水田云々は、思いついたら使いたくて仕方がなかったので、そのまま詰め込んでしまいました。
……先走りすぎましたかね
>唯野ミホ様 初めまして。何度か読んでいただいているようで恐縮です。
二階堂氏は自分の中では反省してるんだと思います……多分(笑)。こういう人、嫌いではないです。関わりにはなりたくないですけどね
「面白かった」と言っていただき、たいへん励みになりました。
皆様、ありがとうございました。重ねてお礼申し上げます。
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Re: 唯野ミホ様 ( No.12 ) |
- 日時: 2003/09/23 19:55
- 名前: 鈴雪
- 唯野ミホ様。
初めまして。今晩は。 「助けて」の感想ありがとうございました。 子供を迎えに行かなければならないのに、パチンコのフィーバーにハンドルから手を離せない蟻地獄のような恐怖を描きたかったのですが、短過ぎでした?(笑 見直してみます 率直なご指摘、感謝です。 本当にありがとうございました。
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「キリング・タイム」の感想 ( No.13 ) |
- 日時: 2003/09/26 09:26
- 名前: かば <kaba@jsdi.or.jp>
- 参照: http://www.jsdi.or.jp/~kaba/
- 蒼井 上鷹さま
こんにちは。 「キリング・タイム」を読ませていただきました。 社内講習会風の会話だけで成り立っているという面白い作りと、 話しているのが「悪魔」という内容が面白かったです。
私も2度ほど会話だけの作品に挑戦したことがあるのですが、 会話だとうまく落とせなくて苦労した覚えがあります。 来月もまた楽しみにしています。
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Re: 全体の感想(2003.9月号) ( No.14 ) |
- 日時: 2003/09/28 21:06
- 名前: ナイトクローラー <hzu01553@nifty.com>
- 参照: http://homepage3.nifty.com/YAMINABE/
- 「ああん桃」
ますゐ英人様、初めまして。ナイトクローラーと申します。「ああん桃」拝読しました。
果物の「気持ち」を表現した傑作だと思います。どこか官能的な雰囲気ですね。「ああ、そういう論法もあるんだな」と納得させられました。
文体は、最初戸惑いましたが、読むのに苦ではありませんでしたね。単純な人間なんで、芥川龍之介とか連想して、一気に読ませていただきました。
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Re: 全体の感想(2003.9月号) ( No.15 ) |
- 日時: 2003/09/30 08:34
- 名前: ますゐ英人
- 参照: http://wing.zero.ad.jp/hmasui/
- >ナイトクローラー様
「ああん桃」への感想、ありがとうございます♪ くだものってなんだか官能的だな、と思ったのが、 きっかけで書いてみました。 他の方々の作品と並んで載せて頂いて、どきどきものでしたが
気になる箇所などありましたら、勉強のために教えてください!
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「助けて」の感想 ( No.16 ) |
- 日時: 2003/10/01 09:42
- 名前: かば <kaba@jsdi.or.jp>
- 参照: http://www.jsdi.or.jp/~kaba/
- 鈴雪さま
初めまして。 「助けて」を読ませていただきました。 どんどん引き込まれてしまう文章で最後まで一息に読んでしまいました。 「パチンコ依存症」とでも言うのかもしれませんが、心の中には とても複雑なものがあるのでしょうね。 個人的にはそんな「奥さん」の心の中がもう少し分かるように もっと語ってほしい気がしました。 他の作品ももっと読んでみたいと思います。
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かば様 ( No.17 ) |
- 日時: 2003/10/01 19:26
- 名前: 鈴雪
- 「助けて」読んでくれてありがとうー
奥さんの心の中――の描写ですね。 腰を浮かせ焦っている姿で、奥さんの心の中を表現して見ました。 たったこれだけの描写ですが―― 物足りないでしょうね(笑
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「ああん桃」を読みました ( No.18 ) |
- 日時: 2003/10/02 04:21
- 名前: pps
- こんにちわ、ppsといいます。文華の一読者です。
ますゐ英人さんの「ああん桃」を読ませていただきました。 (実はメールで感想を書いたのですが、送り損ねていました…)
良かったです(^^ 文語体でしたので最初少し引いてしまいましたが、 読んでみると語りがすこぶる丁寧でしたのでこれは大丈夫だと思いました。
内容も言葉遣いもしっかりしていて これは相当熟練された方なのだと思いました。
奥さんと急展開(笑)なところも愉快でたまりませんが、 植物も快を感じている、というのはちょっと新鮮で面白かったです。
学者Fの「すべての生物は合目的的存在である。」という学説も なんだか説得力があって興味をひかれます。 この学説って実際にあるのでしょうか?
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