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 久しぶりにひどい風邪を引いて、ダウンしてしまった。予兆はあった。2月は28日しかないので、月末がドタバタ。ミニコミ誌の発行、商店街の会計係を勤めているので、月会費の徴収の手配、それから確定申告。
 確定申告に関しては、2月末までに完了しなければならないと勘違いしていたので、自業自得である。いつも市役所で済ませているので、税務署とは違うのだという誤った思い込みがあった。誰彼となく確定申告はどうでしたかと尋ねて(多分に自分は無事に終わったという優越感があって)、まだこれからですと言われて、アレレとなった。
 確定申告は毎年、市役所でやっているので、減価償却などのデータが市役所のパソコンの中に入っている。それに、税務署の職員は水増しなどの不正をチェックするというのが職務なので、応対も上から目線で横柄になりがちだが、市役所の職員は確定申告の期間だけの臨時担当で、どちらかというと納税者の側に立ってサポート&アドバイスしてくれる。
 古本屋の方は、ネット販売を始めて売上はかなり伸びている。といっても元々が惨憺たるものなので、胸を張れるような金額ではない。それでも週に2日、薬剤師のパートをやっていた頃の収入は、どうにか超えてくれただろうか。
 しっかり経費を算出しないと非課税にはならないという危機感があって、綿密に経費を洗い出して、その内訳が説明できるように資料を作った。非課税というのは、「収入から必要経費や年金の掛け金、健康保険税などの控除が認められている金額を引いたものがゼロ以下になること」、大雑把な説明なので遺漏があるかもしれないが、間違ってはいないと思う。
 確定申告の結果は、所得税、地方住民税、国民健康保険料に関係するので、ここで頑張っておかないと三重の負担がかぶさってくる……、それで無理をしてしまったのだが、無事に非課税になって一安心。
 しかし、あとで申告用紙の控えを見て肩を落とした。まだ30万円以上の余裕があるではないか。課税対象の所得金額から、必要経費等を引いた金額がマイナス35万円。経費が35万円少なくても非課税になったわけで、そんなに頑張って経費を洗いださなくてもよかったのだ。
 まあ、逆の見方をすれば、あと35万円分所得が増えても非課税になるわけで、それは今年の目標になる。果たして、古本屋をやっていて課税されるだけの所得を得る日がくるかどうか…………、風邪の話から脱線してしまった(苦笑)。
 体調が悪いと店番をしているだけでもしんどいのだが、話の長い人(つまり何も買ってくれない人)が来ると、顔を見ただけでげんなりしてしまう。心の中で、今日は誰も来ないでくれと願っている。これでは接客業失格である。
 年度末が近づいているせいか、古本の持ち込みや引き取り依頼が増えている。今は整理する元気がないので、店頭や店内に、古本の入った段ボールやうず高く積まれた古本の山が放置されたまま。なんとかしなければと気が焦るばかりで、古本の山を見ると気持が萎えてしまう。古本屋らしくなったね、常連さんの言葉は褒め言葉なのか皮肉なのか。
 先日、知り合いの人から電話があって、友達が大量の本を捨てると言っているが、そちらで引き取ってもらえないかという問い合わせだった。もちろんオッケーですと後日、その方の自宅まで出かけたのだが、写真集や絵画集などのでかい本がどっさり。まだ風邪が治っていないのでひどい筋肉痛で、腰を痛めてしまった。
 こういう大きな本は古本屋泣かせだ。でかいので運搬が大変で、持ち帰っても陳列する場所を確保するのに四苦八苦。おまけにほとんど売れない。昔の大きな家なら全集を飾る応接間があったのだろうが、今のコンパクトな家や部屋には無用の長物。そして、こういう立派な本は意外と数が残っているので、価格の相場が総じて低い。
 ネットで売ろうにも、大きいので送料が嵩んでしまい、宅配業者と契約している大手のネット業者に太刀打ちできない。かくして、店内にずっと居坐ることになる。でかい、売れない、安い、わたしは秘かに「三重苦」と呼んでいる。
 これはあくまで古本屋の立場の見解であって、本にも、依頼者にも責任はない。三重苦を強調しすぎると、本を貶すことになってしまい、持ち主の気分を害してしまう。人間関係の濃い田舎では、都会のようにすべてビズネスライクで対処するわけにはいかない。失礼にならない程度の金額を提示して、「またよろしくお願いします」と頭を下げて辞去するのが無難である。
 ただし、今後はどんな本があるのか、どれぐらいの量があるのか、下見を含めて確認する必要があると強く思った。こんなことを繰り返していては在庫が際限なく増えて、物理的にパンクしてしまう。プロであるなら、これは引き取れませんという線引きをどこかでしなくてはならない。
 ここのところ、アマゾンに古本を登録する作業をさぼっていたので、注文が減ってきている。不思議なもので、新規の登録をコンスタントにしていると、以前に登録した本もそこそこ売れるという傾向がある。名前で買ってくれるほど知名度は高くないし、実際に同じ人が違う本を購入してくれるというケースはほとんどないので、ジンクスのようなものだろうが、売上げが伸びないとやはり商店は元気が出ない。
 今は風邪の症状もどうにか回復。引き取った本が大量にあるので、ネットで売れそうな本を選別、登録作業を再開したいと思っている……、がしかし、その前にミニコミ誌発行のメドを立てないと。3月は去る、いつの間にか月末が迫ってきている。

Copyright(c):Masahiro Akagawa 著作:赤川 仁洋


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*亜木冬彦&赤川仁洋の作品集が文華別館に収録されています。


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